モンゴルは日本と比べ、およそ4倍もの面積を持つ内陸国です。
その国土のほとんどが草原と砂漠に覆われているため、住んでいる人の数は少なく、人口密度はわずか2人/k㎡しかありません。
それでも、首都ウランバートルにはモンゴル全人口の半分もの人々が集い、最大都市として連日お金が飛び交っています。
さて、モンゴルの人々はどのような通貨を使っているのでしょうか?
実は、モンゴルの通貨には面白い点がたくさんあります。モンゴルに旅行するのなら、知っていて損はないでしょう。
本記事では、モンゴルの通貨についてご紹介していきます。
モンゴルの通貨って何?
日本であれば円、アメリカであればドルが使われているように、モンゴルにも独自通貨単位があります。
どのような通貨単位が使用されているのでしょうか。
トゥグルグがモンゴルの通常貨幣単位
モンゴルの通常貨幣単位は「トゥグルグ(Tugrik)」です。モンゴルで表記すると、төгрөг,ᠲᠥᠭᠦᠷᠢᠭとなります。
日本人には発音しにくいので、「トグロク」と呼ばれたりすることも。
単位記号(シンボル)は「₮」であり、一見すると、アルファベットのT文字に斜線が二本入った感じに見えますね。
インフレ率は10パーセント程度と、日本に比べてインフレが進んでいる状態です。
補助単位ムングについて
トゥグルグには、米ドルで言うセント(¢)と同じように、補助単位であるムングが存在します。
実際には現地ではほとんど使用されていません。日本円で言う、銭と同じ感じと言えばイメージがつきやすいのではないでしょうか。
そもそも、ドルとは違い、トゥグルグがそこまで大きな通貨単位ではないため、補助単位の必要性が薄かったのです。
しかし、日本円の銭と違い、国が公式に流通と運用を停止しているわけではないので、ムング表記の貨幣がある場合は使用することもできます。
もっとも、旅行者がムング貨幣を手にする機会はそれこそ貨幣屋に行かなければないと思いますので、モンゴルの補助単位についてはそこまで気にする必要性はありません。
どんな貨幣が流通しているの?
日本では、硬貨と紙幣がそれぞれ流通しています。最小は1円硬貨、最大は10,000円紙幣です。
さて、モンゴルではどのような貨幣が流通しているのでしょうか。
広く流通している貨幣
モンゴルで主に流通している貨幣は10トゥグルグ紙幣、20トゥグルグ紙幣、50トゥグルグ紙幣、100トゥグルグ紙幣、500トゥグルグ紙幣、1000トゥグルグ紙幣、5000トゥグルグ紙幣、10,000トゥグルグ紙幣、20,000トゥグルグ紙幣の合計9種類です。
2000円札が広く普及しなかった日本とは違い、偶数紙幣が広く使用されているのが特徴的です。
これは、隣国のロシアや中国が偶数紙幣の流通が多いことにも影響されていると考えられます。
あまり流通していない貨幣
日本でも、現在流通されていないものの、法的には有効な貨幣があるように、モンゴルにもあまり流通していませんが、利用可能な貨幣があります。
それが10ムング紙幣、20ムング紙幣、50ムング紙幣、1トゥグルグ紙幣、5トゥグルグ紙幣です。
10ムング紙幣、20ムング紙幣、50ムング紙幣、1トゥグルグ紙幣は銀行でも取り扱いがされていません。
しかし、発行が1993年と、まだ最近ですので、収集用には豊富に存在しており、日本でも古銭屋に行けば手に入るレベルの代物です。
この中でも、5トゥグルグ紙幣のみは銀行での取り扱いがあります。もし、両替ができる場合は、5トゥグルグ紙幣をお土産として持ち帰っても面白そうですね。
硬貨もある?
ここまで紹介してきた貨幣は、全て紙幣です。
実は、モンゴルで硬貨は一切流通していません。そのため、細かいお釣りなどを渡される時でさえ、いつも紙幣が用いられます。
それでは、モンゴルには本当に硬貨がないのでしょうか。
実は、1990年代より前の時代には硬貨も存在していたようです。しかし、現在、流通は停止されており、ほとんど手に入れることができないでしょう。
トゥグルグの為替レート
モンゴルだけでなく、どのような国に旅行するときでも気を付けなければいけないのが為替レートでしょう。
日本円を含めた、主要通貨との為替レートを比較していきましょう。
日本円との為替レート
トゥグルグと日本円の為替レートは100トゥグルグ≒3.99円です。
100円につき、2625トゥグルグとなります。
上記の情報は2021年7月6日現在のものです。
米ドルとの為替レート
トゥグルグと米ドルの為替レートは100トゥグルグ≒0.035ドルです。
1ドルが2846トゥグルグになる計算になります。
上記の情報は2021年7月6日現在のものです。
ユーロとの為替レート
トゥグルグと米ドルの為替レートは100トゥグルグ≒0.02954ユーロです。
1ユーロが3384トゥグルグとなります。
上記の情報は2021年7月6日現在のものです。
為替まとめ
上記の通り、1トゥグルグの価値は1円や1ドル、1ユーロに比べてもかなり低く、10トゥグルグ以下の少額貨幣が流通しにくいのもうなずけます。
ウランバートル市で金銭感覚を狂わないように、大体の為替レートは覚えておきましょう。
両替のコツ!
初めて海外旅行をする方で、案外ミスをしがちなのが両替です。
知らない間に両替で損をしているかもしれませんね。
日本円からトゥグルグに両替する際のコツや注意点をまとめてみました。
日本とモンゴル、どちらで両替をするべきなのか?
両替の際、一番ミスをしやすいのは両替のタイミングです。
用心な人であれば、慣れた日本の空港で両替をしたいと思うのが当たり前でしょう。
しかし、一般的にはユーロ圏やアメリカ、イギリスに旅行するとき以外は、旅行先の現地で両替した方がお得です。
これは、全世界で回っている通貨規模の大小に関わります。
旅行先の通貨規模が、本国の通貨規模より大きければ大きいほど、両替の際に発生する手数料は少なくなります。
逆に、トゥグルグのような、モンゴルでしか取り扱いがなく、通貨規模の小さい通貨であるならば、モンゴルで両替した方が倍近くも手数料が違います。
そのため、両替をするタイミングはウランバートルの空港内で行った方が良いというわけです。
モンゴルで両替する際の注意点
もう一つ、モンゴルで両替をする際のコツと注意点があります。
ウランバートル市や首都内の空港であれば、日本円からトゥグルグに直接両替することも可能です。手数料のことを考えると、これが一番お得に済みます。
しかし、もしも地方に行くのであれば、日本の空港で米ドルに両替しておきましょう。
ウランバートル市であれば、直接両替ができますが、一度地方に出てしまうと、米ドルからトゥグルグに両替することしかできないこともしばしばあります。
くれぐれも、地方でも両替できると思い、日本円を握ったまま地方に行かないようにしましょう。
モンゴルの物価
海外旅行にお買い物は欠かすことができません。
店舗によっては、外国人旅行客の税金がタダになることもあります。
しかし、モンゴルの物価はどうなっているのでしょうか。そして、モンゴルでの買い物や旅行は安くつくのでしょうか?
結論から言うと、モンゴルの物価は日本に比べるとかなり安いです。
宿泊費を例にあげても、旅行者が安心安全に過ごせるようなホテルが日本円で2万円ほどで宿泊が可能です。
これは1部屋あたりの値段なので、2人で宿泊する場合はこの半額。
更に、4人部屋ドミトリーを使えば、数百円単位で宿泊することもできるでしょう。
食費についても同じです。モンゴルの方々が普段から利用しているお店であれば、1食150円~300円で楽しむことができます。
ウランバートル市では、ケンタッキーなどの世界的な有名チェーン店もありますが、そちらについては若干高めに設定されているようです。
交通費も同じように安いです。バスやタクシーを使うのが一般的でしょう。
しかし、ウランバートル市で走っているタクシーはほとんど白タク(無認可タクシー)であるため、ぼったくりには注意するようにしましょう。
モンゴル通貨の歴史
モンゴルの通貨は、近現代のモンゴルの歴史と同じように、数奇で困難な道にありました。
実は、モンゴルは1990年代まで共産主義国家だったのです。ソビエト連邦の衛星国であり、政治から経済まで握られていました。
モンゴル通貨の歴史を知ることによって、モンゴルの歴史を垣間見ることができるかもしれません。
モンゴル通貨はソビエト連邦によって握られていた!?
1928年、モンゴル政府が国内通貨をトゥグルグに制定してからというもの、モンゴル貨幣は全てレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)で製造されていました。
東側陣営諸国の通貨をソビエト連邦が製造するということは珍しいことではありませんが、モンゴルのソビエト連邦に対する軍事的・経済的な依存度は高かったです。
そのため、ソビエト連邦16番目の共和国と呼ばれるまでになりました。
1940年代までは、モンゴル文化や言語を紙幣にデザインしていたものの、民族主義否定政策が始まると一転。紙幣にモンゴル語は消え、変わってキリル文字が使われるようになり、デザインも共産主義チックになっていきました。
ソビエト連邦の崩壊後
しかし、ソビエト連邦の崩壊後、再びモンゴル貨幣にモンゴル文字が復活します。およそ50年ぶりのことでした。
キリル文字表記であったことの名残として、現在も裏面にはキリル文字表記されています。
デザインもモンゴル文化色の濃いものに生まれ変わったのです。
モンゴル通貨のデザイン
貨幣はその国の文化や歴史が色濃く出ます。それはモンゴルとて例外ではありません。
ソビエト時代はソビエトルーヴルによく似たデザインであったものの、現在ではお土産にして持って帰りたいくらい、わかりやすい「モンゴル」がデザインされるようになりました。
どこで印刷されているの?
前述の通り、1990年代まではソビエト連邦で印刷されていましたが、1993年以降はイギリスで印刷されています。
イギリスは金融に強い国であり、貨幣製造技術も世界トップレベル。
貨幣技術がまだまだ弱いモンゴルからすると、安心できる発注先と言えるでしょう。
特徴的なデザイン
モンゴルの表面のデザインは大きく2種類しかありません。日本のように、紙幣価値ごとにデザインが異なっているわけではないのです。
5トゥグルグ~100トゥグルグまではダムディン・スフバートルという人物がデザインされています。
ダムディン・スフバートルは、モンゴル共産主義革命の際の英雄です。モンゴルが共産主義を放棄するまでは霊廟にてその遺体が祀られていたほどでした。
現在でも、近代モンゴル軍の父として高い尊敬を集めています。
そして、1000トゥグルグ~20,000トゥグルグまでの高額紙幣には皆様お馴染みのチンギス=ハンがデザインされています。
彼はモンゴル帝国の祖として、世界的にも有名人。現在でも、モンゴルの人から誇りに思われています。
さて、次に裏面はどうでしょうか。
5トゥグルグ~100トゥグルグまでの小額紙幣には、モンゴル人にはなくてはならない馬と草原が描かれています。
高額紙幣には様々なデザインがあり、移動中のオルドやカラコラム宮殿、ギプチャク=ハン国の旗などなど。
ちなみに、透かしは全てチンギス=ハン。
モンゴルが官民共々、チンギス=ハンを強く尊敬しているのが伺え知れますね。
まとめ
モンゴルの経済事情
さて、モンゴルの通貨を詳しく知っていただいた最後に、モンゴルの経済事情についてお話しておきましょう。
モンゴルの経済は日本と比べると、決して豊かとはいえません。
GDPは4041ドルで、これは世界平均の半分を下回ります。
2011年の調査では、1日2ドル(およそ200円)で暮らす貧困層は115万人を超えると言われており、首都ウランバートル内でも格差が広がっています。
社会主義時代、上手く発展できなかったことが現在でも尾を引いており、民主化以降、日本を含むたくさんの国から援助を受けている状態です。
しかし、決して豊かではないモンゴルでは、現在も国土の80パーセントを占める牧草地で遊牧民族が闊歩しており、お金ではない豊かさを感じることができます。
皆様もぜひ、モンゴルに行き、そんな価値観を味わってみませんか?