モンゴルの政治制度は?選挙や政治問題についても紹介

現在「モンゴル国」という国名を採用しているモンゴルは、1924~92年までは「モンゴル社会主義人民共和国」という社会主義国家でした。政治は「モンゴル人民革命党」による一党独裁でしたが、民主化によって複数政党が誕生しています。民主化からおよそ30年が経過する、モンゴルの政治制度について見ていきましょう。

モンゴルの政治制度

 

日本は国の代表である国会議員が、国のトップである「内閣総理大臣」を選出する「議会制民主主義」を採用しています。国家の象徴として天皇をいただく「象徴天皇制」もあり、世界でも異質な政治制度といってよいかもしれません。

それでは、モンゴルでは国のトップは何と呼ばれ、どのように選ばれるのでしょうか?モンゴルの政治制度を見ていきましょう。

共和制(半大統領制)

モンゴルは国民が選挙で直接大統領を選出する「共和制」です。同様に共和制を採用する国家としては、韓国、フランス、アメリカなどがよく知られています。

国民が直接大統領を選出するという点で「大統領制」にも見えるのですが、モンゴルには大統領の指名によって任命される(実質的には議会が選出する)「首相」も存在します。そして、実際に組閣や行政執行を負うのは首相です。

首相によって作られた内閣は大統領・議会に対して責任を負うため、モンゴルの政治制度は「半大統領制」「二元型議院内閣制」と呼ばれます。同様の政治体制を持つのは、韓国・フランス・台湾などです。

モンゴルが半大統領制を選択した理由は「民主化の際、フランスの政治体制を参考にした」「旧体制派と民主派が折衝した結果、半大統領制になった」など、諸説あります。

大統領の権限・任期

モンゴルの大統領の任期は6年で、1度大統領を務めた人物による再立候補は認められていません。これは、2020年の憲法改正によって新たに改定された項目です。

大統領の権限としては、以下のものがあります。

  • 首相の指名
  • 法案の拒否権
  • モンゴル国軍の指揮権
  • 国家安全保障会議議長
  • 裁判官任命の承認

前述のとおり、大統領による首相の指名権は象徴的な意味合いに過ぎません。実際には「国民大会議」(モンゴル議会)が首相を選出し、任命します。

また、大統領には法案の拒否権もありますが、国民大会議で2/3の賛成票が入れば、大統領が拒否しても法案は可決されます。実際に、2020年の憲法改正時は大統領が拒否権を発動したものの、議会が可決。改正案はそのまま承認されました。

議会の権限が強い

半大統領制を採用する国でも、「議会の権限が強い国」「大統領の権限が強い国」など、さまざまあります。例えば韓国は大統領の権限が強大で、宣戦布告の権限や条約の締結権さえ大統領に委託されています。首相・議会は存在するものの、大統領の権限には到底及びません。

これに対しモンゴルは、議会の権限が強いのが特徴です。

まず組閣について、首相は大統領の合意を得た上で、議会に提案することが憲法により定められています。しかし、大統領が「否」といった場合は首相単独で議会に提案することが可能です。

また、大統領には首相を解任する権限はありません。首相が解任されるのは、議会の1/4で不信任決議が可決された場合のみです。

このようにモンゴルでは議会の権限が強化されていますが、これは度重なる憲法改正の結果です。

1992から2000年頃までのモンゴルは民主化に移行したばかりで、混乱が続いていました。2000年の憲法改正により、首相と議会の権限がより強化され、大統領よりも議会が優位に立つ現在のような政治体制が確立されたのです。

モンゴルの選挙制度

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日本では国政選挙というと衆院選・参院選ですが、モンゴルでは国家大会議選挙と大統領選があります。モンゴルの選挙制度と2020・21年に行われた選挙について見ていきましょう。

中選挙区制

モンゴルの選挙制度は「中選挙区比例代表並立制」です。定数は76名で、被選挙権は25歳からと定められています。

民主化当初は定員430名の国家大会議と定員50名の国家小会議がありましたが、1992年の憲法改正で国家小会議を廃止。定員も76名と大幅に減らし、現在に至ります。

モンゴル国民で選挙に参加できるのは、日本と同様18歳からです。制度的には日本とほぼ変わりませんが、投票率は大きく異なります。日本では30~40%が珍しくありませんが、これはモンゴルでは違法です。モンゴルの国政選挙は、投票率が50%を下回ると無効となります。

2020年「国家大会議選挙」

モンゴルでは、国家大会議選挙が4年に1度行われます。直近の選挙は2020年に6月24日に行われた第8回目の国政選挙です。

このときの選挙では、全国に2,070カ所の投票所が設けられ、AM7:00~PM22:00が投票時間とされました。

コロナ禍の中であったため消毒・人との距離を空けることが徹底され、顔認証システムを利用した「デジタル選挙」が導入されました。

通常と異なる雰囲気だったものの、選挙中の大きな混乱はゼロ。スムーズに開票まで進められ、結果、与党であるモンゴル人民党が76議席中62席を獲得する圧勝で終わりました。

野党民主党は議席を9から11に増やしたものの、選挙前と大勢はほぼ変わりません。

与党が圧勝した原因としては、野党の票が分散してしまったこと、選挙区の分割が与党にとって有利だったことなどが挙げられます。

民主化から日が浅いモンゴルでは、これまで選挙の度に与党が入れ替わってきました。しかしこの度は、モンゴル人民党が政権を維持。経済対策やコロナ対策が国民に高く評価されたようです。

なお、投票率は約73.6%でした。

2021年大統領選

国家大会議選挙の翌年2021年6月9日には第8回モンゴル大統領選挙が行われました。

選挙前の憲法改正にて、「個人が大統領選挙に立候補できるのは1回のみ」「任期は6年に延長」と定められ、現職・バトトルガ大統領は立候補不可能に。モンゴルの大統領選挙は全て新人候補が立つこととなります。

モンゴルにおける大統領選立候補の条件は、以下のとおりです。

  • モンゴル人の父母を持ち、5年以上モンゴル国民として登録されている者
  • 50歳以上
  • 不正や違法行為で起訴されていない
  • 国会議員である
  • 任務遂行に関し法的・精神的に問題がない

これにより、元首相で与党・人民党のフレルスフ氏、民主党のエルデネ氏、有権者連合のエンフバト氏3名が大統領の座を争うこととなりました。

結果は、元首相で与党・人民党のフレルスフ氏が67.8%(823,326票)を獲得して圧勝。次いでエンフバト氏20.3%(246,968票)、エルデネ氏6%(72,832票)となりました。

フレルスフ氏が圧勝したとはいえ、国民の信頼が特別に高いというわけではありません。

第8回大統領選挙の投票率は、59.3%と史上最低を記録しています。第1回大統領選の投票率は92.7%だったことを考えれば、かなり低い数字といるでしょう。モンゴルの大統領選は投票率が50%以上ないと無効になるため、ギリギリです。

なお、大統領となったフレルスフ氏は1994年に国際協力事業で来日した経歴があります。青森県の民家にホームステイをし、日本人家族と親しい交流を持ったそうです。

モンゴル政治の問題は汚職

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1992年に民主化して以降、モンゴルではたびたびデモやストライキが起きています。原因は主に政治家・公務員の汚職で、例を挙げれば枚挙に暇がありません。人々の政治不信は加速しているといわれ、現状を打破するのは難しそうです。

モンゴルの汚職問題について見ていきましょう。

腐敗認識指数では低ランク

トランスペアレンシー・インターナショナル」は、世界180カ国を対象に政治家・公務員の汚職度合い(腐敗認識指数)を採点し、ランク付けしています。

2020年度版では、モンゴルはスコア35で111/180位という低い結果になっています。日本がスコア74で19位であることを考えると、モンゴルにおける政治の汚職はかなり進んでいると考えられるでしょう。

豊かな資源が汚職を招いている

モンゴルは豊かな鉱物資源を持っており、これが汚職の温床となるケースが少なくありません。

例えばモンゴル最大級の銅鉱床「オユトロゴイ鉱山開発」は、モンゴル史上最大かつ西洋諸国と手を結んだ初めての大プロジェクトでした。しかし、このときの担当者は賄賂を得てモンゴルに不利な条件を呑んだといわれ、刑務所に収監されています。

また2018年には汚職容疑による元首相・閣僚の逮捕が相次ぎ、嫌疑の目は国会議員・官僚・検察やその関係者らに幅広く向けられました。結果、当時の首相だったフレルスフ氏が国会議長に辞職を求め、同調した国会議員らと本会議をボイコットする騒動が起きています。

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汚職撲滅を目指すモンゴル

近年、モンゴルの政党は「行政機関の透明性を増すこと」「腐敗を撲滅すること」などをマニフェストに掲げるようになりました。しかし、「モンゴルの政党・政府そのものがすでに腐敗している」と厳しい見方をする人も少なくありません。

モンゴルには「賄賂対策庁」がありますが、それでも汚職がなくなっていないのが現状です。

賄賂対策庁の歴代の長官は原因不明の死を遂げたり収監されたりと、あまりよい最後を迎えません。これは、賄賂を暴かれると困る権力者が数多くいるということを示しているのではないでしょうか。

モンゴルの政治制度で汚職がはびこる原因

 

モンゴルで汚職がはびこるのは、権力で私腹を肥やそうとする政治家・公僕が多いためです。モンゴル政治家と汚職が切っても切れないのはなぜなのでしょうか。モンゴル政治で汚職が常態化している原因について考えてみましょう。

三権分立が機能していない

モンゴルでは司法機関まで汚職に染まっているといわれ、監査や司法機関の独立性がほぼない状態です。

政治家による汚職が野放しにされ、悪事が露見しても罪に問われないケースが少なくありません。たとえ汚職犯罪が世間に暴露されても裁判や捜査が長引き、刑罰が形骸化してしまうのです。収監されても大統領の恩赦ですぐに釈放されることが多く、結局また同じことが繰り返されます。

コネ・賄賂が当たり前の社会

モンゴルの政治が腐敗するのは、モンゴル社会にコネ・賄賂が当たり前のように浸透していることも原因の一つでしょう。

モンゴルではコネを持つ者が有利であり、ない場合は袖の下を使って融通を利かせるしかありません。モンゴルでは一般社会においても、能力・正義だけでは生きていくのが困難なのです。

本来政治家は清廉潔白であるべきですが、政党から腐敗しているとなるとどうにもなりません。モンゴルの腐敗は国家の信用を低下させるまでになっており、国民が不利益を被っている状態です。

まとめ

モンゴル ウランバートル

モンゴルの政治制度は日本とは異なります。大統領・首相がいますが、行政権を握っているのは首相です。議会の権力が強く、議会の多数を野党が占めるか与党が占めるかで大統領の政権運営は大きく変わります。

現在の大統領であるフレルスフ氏は与党出身で、ねじれ政治は起きていません。フレルスフ氏は汚職や資源問題にも積極的に対応していく姿勢を見せており、6年の任期でモンゴルをどのように導いていくのかが注目されます。