モンゴル人の雇用事情を知ろう!見えてくるモンゴルの経済状況

モンゴルは東アジアと北アジアのちょうど境目に位置する国です。

面積は広く、その広さは世界国別ランキングでも18位になるほど。しかし、その実国土のほとんどが砂漠と草原に覆われているため、中々定住化が進まなかった国です。

歴史的にも、各中華帝国に対し、度々国境を侵犯したのはこの地から生まれた遊牧民族であり、彼らは近世に入るまで定住という文化がなかったことが知られています。

しかし、近代に入ってその状況は激変。

清国による統治、独立後の社会主義化、冷戦終結による社会主義政策の放棄など、目まぐるしく政治情勢は変わっていきました。

特に、社会主義時代、民族文化が弾圧され始めると、モンゴル人の定住化率が飛躍的に向上しました。

現在、モンゴル人の半数程度がウランバートル市に定住しています。

遊牧を辞めた彼らは、いったいどのような仕事をし、給与はどれくらいなのでしょうか。

モンゴル雇用の国内事情

モンゴル人がの内、どの程度が働いているのか、女性の就業率はどの程度なのかは雇用事情を調べればすぐにわかります。

労働力人口

まずは労働力人口を見ていきましょう。

2012年時点、モンゴルの労働力人口は1,270,921人です。これは決して多い数値ではありません。

ILO(国際労働機関)に批准している185ヶ国の内、134番目です。

ちなみに日本は2012年時点では1億2762万9千人。世界でもトップレベルの労働力人口を有しています。

人口が何倍も開きのある日本とモンゴルを比べてしまっては正しい認識が得られませんが、人口に対する労働力人口が少ないのもモンゴルの特徴です。

2012年時点でモンゴルの人口は約300万人。人口に対して、40%ほどしか労働者がいないのです。

日本がここ十数年、人口に対し、50パーセント以上の労働力人口を確保しているのとは対照的。

これは、社会主義政策放棄後にモンゴルで起きた、ベビーブームに関係していると言われています。

現在、モンゴルは未成人人口が非常に多いという人口構造になっているため、人口に対する労働力人口が低いのです。

また、女性の労働力人口が多いのも一つの特徴でしょう。

モンゴルは常にマンパワー不足に悩まされているため、日本よりも女性の社会進出が進んでいます。

2012年現在、女性の労働力人口は581,292人で、労働力人口に占める女性の割合は45.738%と高水準を記録。

これにより、今後晩婚化やそれに伴う出生率の低下が懸念されますが、今後も女性の社会進出は更に進んでいくことでしょう。

失業率

モンゴルの失業率は10%ほどです。

世界的に見ても、かなり大きい数値を示しています。

モンゴルは資源大国であることが知られており、それでGDPや国税収入を賄っています。しかし、2012年以降、主要輸出相手国の政策転換により、モンゴルで産出される資源の需要が大きく落ち込みました。

こうした厳しい状況下にあるため、GDP成長率は下がり、失業率はどんどん上がって現在に至っています。

また、ソビエト連邦の崩壊に伴う余波は現在でもモンゴルを苦しめています。

特にモンゴル第四の都市、チョイバルサン市はそれが顕著です。

20世紀には東モンゴルの経済の中心都市として成長しましたが、民主化以降、ロシア人労働者が流出。

それに伴って経済が大きく衰退し、30年ほど経っている現在でも国内最悪水準の失業率にあえいでいます。

雇用形態

次に、モンゴル人がどのような雇用のされ方をしているのかを見ていきましょう。

実は、モンゴル人はサラリーマンの数が少ないです。

自営業をしている方が男女問わず多いのが特徴的。

就業者に占める自営業率は56.1%(2011年)を示しており、女性だけでも53.2%です。

モンゴル人はどんな仕事をしているの?

農業

モンゴルは前述の通り、決して農業に適した土壌があるとは言い難いです。

加えて、気候もステップ気候と、農業をするには夏が暑すぎ、冬は寒すぎます。

しかし、社会主義革命の起きた1900年代初頭から国を挙げて大規模な農業が始まりました。

現在、モンゴルの労働人口比で言うと、農牧業従事者の数は33%。モンゴル国内で最大勢力になっています。

ただし、主要産業の対GDP比は13%で、後に紹介する鉱工業の22%を大きく下回っているのが現状です。

従事している人が多いのに、賄われるGDPが少ないのはモンゴル農業の厳しさを示しているのかもしれませんね。

作付品目については麦、じゃがいもといった穀物が中心であり、野菜も少しだけ作付されています。

現在、モンゴルの食糧自給率は決して高くはありません。

しかし、2010年のモンゴル政府発表によると、小麦とじゃがいもについては自給率100%を達成したと言われています。

工業

工業は分野別労働人口比から見ると、12%の人口規模を誇ります。これは、モンゴル国内第12位です。

昨今、モンゴル国内で生産される資源の需要が落ち込んだため、失業率が増しているのが問題視されています。

また、ソビエト連邦の崩壊に伴う、ロシアからの莫大な資金援助技術援助の打ち切りにより、炭鉱運営の専門家や技術者不足も問題化。

現在は中国人を始め、多数の外国人を就労させることによって運営されていますが、国内感情を悪化させているのも事実です。

特に銅の産出が目覚ましく、年間23,000,000トンも産出される他、モリブデン・金・銀・ウラン等、豊富な資源が眠っています。

鉱物資源のほとんどは中国へ輸出されており、モンゴルのGDPを支える一大産業と言えるでしょう。

第三次業

最後に、第三次産業です。

意外にも、第三次産業は工業等第二次産業よりも従事している人が多く、分野別労働人口比で言うと、22%にも上ります。

内訳で言うと、貿易・卸売・小売などの商業が15%、輸送や通信などのインフラ関係が7%になります。

輸送・通信費によって賄われるGDPは7%しかありませんが、商売分野で賄われるGDPは鉱工業にも負けず劣らずの19%。

昨今、ケンタッキー・フライド・チキンをはじめとする西側諸国の資本や店舗も流入していることから、今後も更なる発展を望むことができるでしょう。

仕事別平均月収

仕事別平均月給はモンゴルの国家統計委員会の発表を見ればわかります。

2011年現在の発表ですが、給与が最も高いのは金融分野です。

月収88万6900トゥグルグはモンゴル人の平均月収を頭一つ抜けており、あこがれの職種の一つと言えましょう。

しかし、88万6900トゥグルグも、現在の為替レートで日本円に直すと37000円程度にしかなりません。

次に平均月収の多い産業は鉱山業(採掘分野)です。73万2400トゥグルグ(30727日本円)もモンゴル国内においてはかなり高収入の部類です。

モンゴル人労働者が鉱山に集まる理由がよくわかります。

次に多いのは、国防・国家公務員幹部職員、社会保険分野で43万4300トゥグルグ(18220日本円)です。

金融業に比べると大分安くなりました。これでも公務員給与はモンゴルの経済発展と同時に年々引き上げられており、高くなっています。

他にも電力会社・鉄道・教育などのインフラや社会整備関連の仕事が続きますが、モンゴルでも一番貧困になっているのが農業分野です。

農業分野はわずか20万3100トゥグルグ(8520日本円)しかなく、金融分野と比べると2割程度の収入しかありません。

都市と農村の間で貧富の拡大が如実になっています。

モンゴルという土壌の性質上、同一面積土地に対する増収は見込めず、零細農家が都市に流入してしまう要因です。

現に鉱山業や加工業が年々給与が上がっているのに対し、農牧業はほとんど横ばい成長。

今後、農家に対する補助や画期的な農業技術改革が必要なのかもしれません。

遊牧民の仕事はどんなの?

モンゴルと言えば遊牧民!というイメージのある方は多いかもしれませんが、それは日本と言えば侍!というくらい無理のある話です。

現在、モンゴルで遊牧的な暮らしをしている人は全人口の1割程度

それでも、1割は未だに遊牧で生活しています。

モンゴルの遊牧民はどのような仕事をしているのでしょうか。

仕事

家畜業は遊牧民にとってなくてはならない仕事です。

ところで、遊牧民がなぜ各地を歩き回り、定住しないか知っていますか?

それは馬をはじめとする家畜の餌を探しているためです。

モンゴル高原には、草食動物の好む牧草や下草がたくさん生えており、モンゴルの遊牧民はそれを家畜に食べさせ、そこから生産される家畜の肉や乳で生活しています。

ただし、最近は春営地、夏営地、秋営地、冬営地が決まっており、春冬で移動はするものの、住居は比較的固まっています。移動は概ね年4回だそうです。

2月~4月にかけては家畜の出産期で、営地も出産をするのが目的に選ばれます。

5月~8月は搾乳機で、遊牧民にとっては最も繁忙期にあたる時期。

たくさん食べさせて肥育するのが目的なので、食べられる牧草の多い場所に営地を設定します。

9月~11月にかけては一部の家畜をつぶし、肉に変えて冬に備えます。また、冬の厳しい寒さに家畜が乗り越えられるよう、この時期から徐々に寒冷な場所に移動するそうです。

冬場は牧草が手に入りにいため、用意していた牧草で家畜の食事をまかないます。最近では、業者から購入することもあるそうです。

また、営地も厳しい北西風を避けることのできる山影に作ります。

少なくなっている遊牧民だけど・・・

遊牧民はその生活の性質上、インフラ設備が非常に使いにくいです。

電気については、太陽光発電で各家族が小規模な発電を行っています。

夜の豆電球、テレビなどの電力などに使います。

しかし、それ以外のインフラはほとんど皆無。上下水道はなく、近くの川などから水を汲んで生活に利用します。

トイレもその辺の草むらにするか、近隣家庭と共同のぼっとん式トイレで用を済ませているそうです。

このような不便さから、豊かさを求めて多数のモンゴル遊牧民がウランバートル市を始めとする都市部に流入しました。

しかし、最近のアンケートによると、現在のモンゴル遊牧民は生活に対する満足度がそこそこ高いのがわかっています。

生活に対する満足層は78.7%と、都市部集合住宅に住んでいる人の満足層56.1%を大きく上回ります。

遊牧民は現在でも不便ながら、今あるものに対して喜びを感じられる民族なのかもしれませんね。

モンゴル人は海外へ出稼ぎに!

ジャパンドリームを求めて!

前述の通り、モンゴルでは貧富の差が拡大しており、首都ウランバートルでさえ、仕事にありつけない人がいます。

そのため、モンゴル人にとって、給与の良い日本で働くことは一つの夢です。

特にモンゴル人が目指すのは相撲界への参入です。昨今、モンゴル人力士も増えてきており、その精悍さは日本人もよく知るところであろうと思います。

日本の相撲界で幕内まで上り詰めると、モンゴルで一生遊んで暮らせるくらいの貯蓄を得ることができるでしょう。

しかし、現実はそこまで甘いものではありません。

日本の相撲界で成り上がれるかどうかもそうですが、何よりも日本に行き、滞在するのにも費用が必要です。

つまるところ、ジャパンドリームを目指せるのも、モンゴルでそこそこ経済基盤の整った人でないと不可能なのです。

これらの問題はモンゴルではなく、各発展途上国や各後発開発途上国でも同じようなことが言えます。

まとめ

モンゴルにいる日本人

モンゴルに住んでいる日本人の多くはウランバートル市に住みます。

在留邦人数は447名で、航空会社や大使館関連の仕事をしている人やモンゴルの各鉱山で技術職として働く方がほとんどです。

ただし、中国人に対する反感が根強く、中国人に間違えられたアジア人が暴行などの被害に遭うという事件も度々発生します。

そのようなことが在モンゴル日本人が増えない要因となっているのです。

しかし、昨今、モンゴルの雄大な自然に感化され、現地の遊牧民と一緒に遊牧的な暮らしに取り組む日本人もいるんだとか。

その方の話によると、

「モンゴルは確かに日本ほど豊かな国ではない。だけれど、草原の上で輝く夜の星々は日本で決して見れないものだ。」

そうです。

一人の日本人の心を奪ってしまうほどの、お金ではない豊かさがモンゴルにはあるのでしょうね。