ソヨンボ文字に隠されれていた!?モンゴル国旗の意味とは?

モンゴルとは12世紀に自分たちがつけた族名であり、『勇猛な人』という意味があります。

モンゴル国の国旗には『ソヨンボ』と呼ばれているモンゴル独特の文字が描かれていますが、『ソヨンボ』にはどんな意味があるのでしょうか?

モンゴル国にはソヨンボ文字という文字があって、1686年に作られたそうですが、どんな文字だったのか、モンゴル国の国旗に関係した事柄を紹介していきたいと思います。

国旗にはどんな意味があるの?

モンゴル国の国旗について紹介する前に、そもそも国旗にはどんな意味があるのかを見ていきましょう。

国旗は国家を象徴する旗であり、学校や議会、裁判所、軍隊、国際的な会議や公的行事などで掲揚されています。

また、その国民によっても掲揚され、船舶や軍隊でどこに所属しているのかを表す意味で使われています。

歴史的に見た国旗は、戦場での所属を表すものであり、兵士がどの国に属するのかを明確にするものでした。

17世紀になると、船舶の所属を示す商船旗として使われ、軍事的な意味から離れて使用されるようになりました。

18世紀の終わり頃から、各国でナショナリズムの意識が高まり、国民の間でも国旗を掲揚することが好ましいこととされました。

特にアメリカ合衆国の国旗は、イギリスからの独立後、州の数である13個の星を散りばめた星条旗がアメリカ合衆国の象徴となりました。

日本でも祝日などで、各家庭で国旗を掲揚していた時代があったのですが、現在ではその習慣はなくなっています。

日本の国旗として親しまれている国旗は、法律上では『日章旗』と呼ばれ、一般的には日の丸という言葉で呼ばれています。

国旗にはそれぞれ意味があって、たとえば日章旗の場合、赤い日の丸は日の出の太陽を象徴し、紅白は日本の伝統的な色であり、めでたいものとされました。

また、赤は博愛と活力、白は神聖と純潔を意味しています。

モンゴルの国旗の色やソヨンボにも意味があった

現在のモンゴル国の国旗は、1992年2月12日につくられました。

モンゴルの国旗は縦に3つに色分けされていて、両端が赤色で真ん中が青色です。

また、左の赤色の中には独特の絵柄が書いてありますが、これは『ソヨンボ』と呼ばれるもので、『ソヨンボ』はモンゴルの古くからのシンボルでモンゴル国民の自由や独立を象徴したものです。

伝統あるシンボルである『ソヨンボ』は、繁栄、神聖、主権、高潔、自由、団結といった意味があります。

モンゴル国の国旗の左側に描かれているソヨンボは、上から『炎』『太陽と月』『矢』『巴型の魚』『要塞』といったものが描かれ、炎は回復や成長を表し、太陽と月は古代の自然宗教からとっています。

また、2匹の魚の巴型は宇宙の単一性と陰陽を表し、2つの縦長の長方形は「2人の友情は石壁よりも強い」といったことわざからきている要塞を表しています。

国旗に描かれている色に関しては、赤は国の団結の強さを表す正義を意味し、青はモンゴルの空を表しています。

また、赤は勝利と歓喜、青は不変の空と忠誠や献身を表しているともいわれています。

モンゴル国の国旗のデザインは縦に3分割ですが、同じように縦に3分割の国旗には、フランス、アイルランド、ベルギー、ナイジェリアといった国の国旗があります。

特に2色で縦の3分割というデザインは、ナイジェリアと同じであり、ナイジェリアは両端が緑色で真ん中が白色になっています。

ちなみにナイジェリアの国旗の色の意味ですが、緑は森林と天然資源、農業を表し、白は平和や統合を表しています。

ただ、モンゴル国の国旗とナイジェリアの国旗の違いは、モンゴル国の国旗には右端に『ソヨンボ』と呼ばれているモンゴル独特の文字が描かれているということでしょう。

モンゴル国の国旗は何度か変更された?

モンゴルの国旗は、1921年に初めてモンゴル人民政府の旗としてつくられました。

その後、1924年にモンゴル人民共和国の旗として新たにつくられ、1940年、1945にも国旗の変更がありました。

モンゴル国の国旗には、1945年から左側にあるソヨンボの上に社会主義を意味する金星が付けられていましたが、1992年にその金星が外されて金星の代わりに炎がつけられ、現在のような国旗になりました。

炎は回復や成長を表しているということですが、それまでの1921年から1992年まではモンゴルにとって激動の時代がありました。

モンゴルの国旗がつくられた時代背景とは?

モンゴル人民政府時代の国旗は1921年につくられたものですが、当時のモンゴルはどんな時代だったのでしょうか?

現在のモンゴル国の国旗になるまでに、何度か国旗が変更されていますが、その背景にはどんなことがあったのかを見ていきましょう。

1917年にロシア革命が起きた頃、中国は外モンゴルに進出し1919年には外モンゴルを占領します。

1920年になるとソ連の赤軍との内戦で不利な状況となったソ連の白軍が、体制の立て直しのためにモンゴルへ侵入し中国軍を駆逐しました。

しかし、モンゴルは白軍の残忍な行為に離反し、ボドー、ダンザン、スフバートルらがモンゴル人民党を結成し、ソ連への援助を求めました。

それに応じた赤軍や極東共和国軍がモンゴルに介入、ジェプツンタンパ8世を君主とするモンゴル人民政府を樹立させたのが1921年7月で、その時にはじめて国旗をつくっています。

その後、1924年にジェプツンタンパ8世が死去したことで人民共和国へと政治体制を変更し、モンゴル人民共和国が成立していますが、この時に国旗も変更されています。

1934年になると、ソ連との相互軍事援助協定が結ばれ、ソ連の指導者だったスターリンは、モンゴル人民共和国のゲンデン首長に何度もラマ教寺院の破壊を要求します。

しかし、ゲンデン首長はことごとく拒否したことからソ連で処刑されてしまいます。

1936年3月にソ連との間で、ソ蒙相互援助議定書が締結されていますが、翌年の1937年には800の修道院が破壊され、約1万7,000人の僧侶が処刑され、その年にソ連軍が大規模な進駐がありました。

その結果、モンゴル人民共和国の政府、軍部高官、財界首脳たちがゲンデン首長に関わるスパイに関与したとして、5万7,000人が逮捕、2万人が処刑されるという事件が起きました。

1939年には、当時の満蒙国境で日本軍・満州国軍とソ連赤軍・モンゴル人民軍の戦いである、いわゆるノモンハン事件が起きました

この事件が近代におけるモンゴル人民共和国の最初の対外戦争であり、その後の1945年の日ソ戦争や、1947年の中華民国との武力衝突があった北塔山事件以降は、対外戦争は行われていません。

モンゴル人民共和国の時代の中でも、対外的に不安定な1945年に現在のデザインの元になる国旗がつくられたということになります。

1990年の春、初めて日本を公式訪問したドゥマーギーン・ソドノム首相の決断によって、一党独裁を放棄し、1992年にはモンゴル人民共和国から現在のモンゴル国への改称、社会主義を完全に放棄しています。

モンゴル人民共和国からモンゴル国に改称した結果、それまでのモンゴルの国旗の中のソヨンボ上にあった金星が外されました。

ソヨンボの上の金星の代わりに炎がつけられ、現在のような国旗になりました。

ソヨンボ文字は歴史上、4番目のモンゴル語?

ソヨンボ文字はモンゴル語を表すため、1686年にボグト・ザナバザルという僧侶が作成したアブギダ系の文字であり、チベット語やサンスクリット語を表記することもできました。

ソヨンボ文字はモンゴル語の文字として、歴史上4番目の文字で『トド文字』(モンゴル語を改良した文字)の発明から38年後に作られています。

ソヨンボ文字の中でも特に『ソヨンボ』と呼ばれるのが、モンゴル国の国家の象徴にもなっていて、1921年からのモンゴル国の国旗に使用され、1992年からは国章や紙幣などにも使われるようになりました。

ソヨンボ文字の歴史や文字の特徴とは

ソヨンボ文字が使われていたのは、17世紀~18世紀でこの文字の生みの親であるサナバザルは、サンスクリット語やチベット語で記された仏典を翻訳するために作成し、弟子たちとともに用いていました。

ソヨンボ文字はモンゴルの東部で、主に儀式的、あるいは装飾的なものに使われていました。たとえば、歴史的な文章や寺院に残されている碑文などにもこのソヨンボ文字が使われていました。

ただ、日常的に使われる文字としては複雑すぎるため、今ではソヨンボ文字はほとんど姿を消しています。現在では使われていないもののモンゴル国の象徴的な文字として残っているようです。

ソヨンボ文字の特徴としては、モンゴルのそれまでの文字が縦書きだったのに対し、ソヨンボ文字は初めて左から右に横書きされる文字となっていました。

これは、チベット文字やデーヴァナーガリー文字と同じで、水平線に連なるようにぶら下がる形になっています。

また、国旗に描かれている『ソヨンボ』には、2種類のバリエーションがあり、文章の始めと終わりを示すのに用いられます。

『ソヨンボ』以外のソヨンボ文字に見られる逆L字型の基準枠は、『ソヨンボ』の中に描かれている上の三角形とその右の棒からとられています。

まとめ

モンゴルがモンゴル人民政府として国旗を作ったのが、1921年でした。その後、1945年にモンゴル人民共和国としての国旗がつくられましたが、この国旗は現在の国旗の基になっています。

赤と青の2色によって3分割され、左端にはソヨンボといわれるモンゴル国を象徴する絵柄が書かれています。

1992年にモンゴル人民共和国はモンゴル国と改称され、その時に国旗も変更されていますが、ソヨンボの上に描かれていた社会主義を表す金星が外され、代わりに炎が描かれています。

国旗の中のソヨンボには繁栄、神聖、主権、高潔、自由、団結といった意味がありますが、国旗に描かれている色にも意味があって、赤は国の団結の強さを表す正義を意味し、青はモンゴルの空を表しています。

モンゴル国だけでなく、それぞれの国旗には意味がありますから、その国の国旗の意味を調べてみるのも面白いでしょう。